見えない川の流れを整える

ツボというのは何となくご存知の方が多いと思いますが、「経絡(けいらく)」という名前はお聞きになったことがあるでしょうか?
あまり馴染みのない方が多いかもしれませんね。
この経絡とツボは切っても切り離せないとても関係の深いものなのです。

ツボは正式名称「経穴(けいけつ)」といいます。
よく「肩こりにいいツボを教えてください」とか「便秘にいいツボを教えてください」などと聞かれることが多いのですが、ツボは皆さんが思っていらっしゃる通り身体のいろいろな部分に点在しています。
ただ肩こりに効くツボが肩にあるのは分かる気がしますが、なぜか手にも肩こりに効くツボがあったりします。
どうして身体の離れた部位に効くツボがあるのでしょうか?
不思議ですね。

実はツボというのは星座のように点々と身体にあるわけではないのです。
身体には見えない川のような流れが存在していると考えられていて、その川の流れのところどころに特別なスポットとしてあるものがツボなのです。
川の流れが線路だとしたらツボは駅のようなものです。
そしてその川の流れ、線路にあたるものが「経絡」なのです。
何だかよく分からないように思えた経絡も実はそんなに難しいものではないのです。

この経絡は大きな流れが何本かあって、川と同じように支流があったり合流していたりします。
また血管と同じように全身にはりめぐらされていて、目鼻口といった器官や臓器などあらゆるところに流れています。
見えない血管のようなものと考えると分かりやすいですね。

ツボというのはこの経絡の上にある特別なスポットですから、ツボに働きかけることでそのツボがある川の流れやその川が栄養しているものを整えることができます。
さきほど例にあげた肩こりに効くツボが手にあるのは、手から肩に向かって流れる経絡があるからなのですね。

シンプルにいうと鍼やお灸などはこのツボに働きかけ、経絡の流れを整えているのです。
身体に不調がある場合は、経絡である見えない川が汚れていたり流れが滞ったりしています。
そうしたときにツボを使って川を綺麗にし流れをスムーズにすることで、少しずつ身体が整い現れている症状が和らいでいきます。

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不調が固まる前に

そんなに辛いというほどでもないんですけど…と治療室にお越しになる方がいらっしゃいます。
そういう方もちろん大歓迎です。

病院の検査では何ともない、でも何となく調子が悪い、疲れているといった段階で手を打つことはとても大事です。
東洋医学では病と健康をはっきりと分けて考えません。
ここまでが健康でここからが病気だという風には考えないのですね。
グレースケールのように白から黒に向かってなだらかに濃淡が変化しているグレーの色が続いているように身体を診ています。
そしてどの色の段階でもそれぞれの状態にあった治療を行うことができます。
健康と病気を分けて考えないため、白でも黒でもグレーでも治療を行うことができるのですね。

何となく現れた不調の段階、病気と名前のつく前の段階では、身体はまだすぐに治りやすい状態です。
ですが不調が固まっていくにつれてグレーの色が濃くなり、いざ鍼灸や漢方など東洋医学の治療を受けても、治りにくくよくなるまでに日数がかかるようになってしまいます。

ですからちょっとした不調でも特に病気がない段階でも、遠慮することなく鍼灸治療を受けにお越し頂けたらと思います。

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頭の納得と心の納得

頭で分かってはいるのだけれど、何だか納得できない。
そのようなことはありませんか。
どうも頭の納得と心の納得は違うようです。

心が納得できていないことを自分で分かっている場合はまだいいのですが、納得しているつもりでいるのに心の奥底では納得できていないとき、自分で気づいていないとき、そういったギャップが身体に大きく影響を及ぼすように感じています。
納得しているつもりの自分に対して「納得できてないんだけど!」と身体が不調を声にして訴えているような感じでしょうか。

今起きている状況のよい面に目を向けて心を納得させようとするのも一つの方法ですが、その前に自分は本当はどう感じているのだろうか?ということをしっかり感じとることも必要なようです。
今の自分の本当の気持ちを知ることができると、不思議なことに気持ちが次の段階へと変化していきます。
そうすると無理によい面に目を向けようとしなくても、自然とよい方向へ気持ちが向くようになるのです。

心を納得させるには今の自分の本当の気持ちをていねいに感じとることです。
なかなか難しいことではありますが、身体の声を聴くというのはこういうことでもあるのかもしれないですね。

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身体は季節に呼応する

まだまだ寒い日もありますが、日差しがだいぶ春らしくなってきましたね。

明日3/6(火)は啓蟄です。
虫もごそごそと地中から這い出て動き始める頃という意味ですが、植物や虫、動物たちは季節を敏感に感じ取り、それに合わせて身体を変化させたり行動を起こしたりします。
人間も例外ではありません。
自分では気づいていないだけで、身体の見えない部分では虫がごそごそと這い出るような動きがダイナミックに起こっているのです。
夏には夏の秋には秋の冬には冬の、そして春が近づく今の季節には春の力が身体の中で動き始めているのですね。

春の力とは一体どのようなものでしょうか。
自然を観察してみるとよく分かります。
虫が穴から這い出たり動き始めたりするような力、植物が芽吹くといったような力です。
発散、発生、発陳といった言葉でも表されます。
冬の間にしっかり守り熟成させた力を春になって発揮し始めるような、内から外へ向かう力です。

陽気に誘われて何だか身体を動かしたくなってきた、新しいことを始めたくなってきたなんて方もいらっしゃるのではないでしょうか。
見えない部分で働いている力を自然と感じとっているのですね。
そういったことを感じる方も感じない方も、少し早く起きるようにしたり身体を軽く動かしたりして、日常の過ごし方を冬モードから春モードへと少しずつシフトチェンジしましょう。
そうすることで季節に身体が呼応しやすくなり、心身の不調も出にくくなりますよ。

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