脈で何を診ているのか

脈は大切な判断材料です

施術を始める前には、舌やお腹、頭や足など体のいろいろな部分を見たり触ったりさせて頂きながら、お体がどのような状態なのかを把握していきます。

その中でも「脈診(みゃくしん)」という手首の脈を診るものは、施術前はもちろん施術中、施術後など、何度も確認させて頂く大事なポイントになります。

脈の速さや不整脈がないのか診ているのかな?と思われる方が多いのですが、それだけではなく、東洋医学では独自の見方で体の細かな変動をキャッチし、施術の方針を決めたり変化を知るための大切な判断材料となるものなのです。



脈の質感や形を診る

脈は細かく診ていくと、速さだけではなくいろいろな質感や形の違いがあることが分かります。
硬いのか軟らかいのか。硬いといっても全体が硬いのか一部が硬いのか。軟らかい場合は弾力があるのか、ふにゃふにゃなのか。大きいのか小さいのか。平べったいのか細長いのか。
他にも皮膚の表面に近い部分で脈を打っているのか、それとも奥の方で打っているのか…など脈の位置も確認します。

そして、これらのものを組み合わせると何通りもパターンがあることが分かります。
速い脈で大きくて硬くて皮膚の表面に近い部分に脈がある。
遅い脈で小さくて軟らかくて奥の方で打っている…などいろいろなパターンが考えられますね。

脈を細かく診ることで、これらのパターンから体が今どのような状態にあるのかということが推測できるようになっているのです。



6本の指で体のバランスを診る

脈は両手の手首の脈を診させて頂くのですが、施術側は左右の人差し指、中指、薬指の計6本を使います。

そして、この6本の指に触れた脈がそれぞれどのような状態にあるのか、というのをさらに細かく診ていきます。

東洋医学に詳しい方だと、「肝(かん)」「心(しん)」「脾(ひ)」「肺(はい)」「腎(じん)」という五臓(ごぞう)の考えをご存じかもしれません。

これらは臓器を含めた体の働きを表す概念のようなものです。
これら五臓のバランスを知ることが、体の状態を知るということにもなっていきます。

この五臓にプラス「心包(しんぽう)」という五臓の仲間のようなものを加えた6つが、それぞれ6本の指に割り当てられており、それぞれがどのような状態にあるのかを知ることができるようになっています。

また五臓六腑という言葉があるように、五臓だけではなく六腑もそれぞれ6つの指に割り当てられています。
東洋医学でいう六腑とは、「胆」「小腸」「胃」「大腸」「膀胱」「三焦(さんしょう)」の6つです。
聞きなれない言葉があると思いますが、これらも臓と同じように体の働きを表す概念のようなものです。

6本の指を手首にそっと置いた状態で腑の様子を伺い、少し強く押すことで臓の状態を診ます。
こうして五臓や六腑の状態を確認し、体のバランスがどのようになっているのかを判断していきます。



脈診は天気図を見るようなもの

脈を診るということは、天気図を見て天気を読み解くようなものです。
気圧や雲の状態がどのようになっているのかを天気図で確認するように、脈で体の内側がどのような状態になっているのかを知ることが脈診なのです。

ただし、体の状態を知るために重要な脈診ではありますが、脈だけではなく、お話を伺ったり舌やお腹などを見せて頂いたりしながら、総合的に判断していくことが大切です。
そうすることで、より正確に体の状態を把握することにつながっていきます。