治療はやりすぎない

鍼灸治療を行う際の大切なことの一つとして、やりすぎないことがあります。
痛いところや辛い症状は早くなくして差し上げたいのですが、それを1回の治療で「なくそう!」と頑張るとかえって悪化してしまうことがあります。
「過ぎたるは猶及ばざるが如し」という言葉がありますが、本当にその通りなのです。

人の治癒力は大変繊細なもので鍼やお灸などの刺激を受けると、バランスをとりながら少しずつ少しずつよい方向へと変化していこうとします。
鍼灸の施術が終わってもその変化は続いていきます。
ですので治療が終わった時点で10点満点を目指してしまうと、さらにそこからも変化は進みますので、10から逆に9、8、7…と戻っていってしまうのです。

身体が自由に動こうとする余裕を残して治療を終えることが大切なのですね。
そうすることで身体は丁寧にゆっくりとバランスをとりながら変化していくことができます。
それは自分で運動したりお肌の手入れをしたりといったことにも通じることかもしれません。
やり過ぎはかえって悪化してしまうということをよく考えて、8分ぐらいにとどめておきましょうね。

関連記事
身体の欲していることはシンプル
陰と陽から身体を見る
頭のマッサージはやりすぎない
回復はらせん状に
癒すのは身体自身

胃を冷やさず夏バテ予防

今年の初夏は暑いですね。
今から熱中症予防に意識して水分を摂られている方多いと思います。
暑いですからがぶがぶと冷たい飲み物を飲みたいところですよね。
ですが、冷たい飲み物を飲むのはちょっと待ってください。
大切な胃を冷やしてしまいます。

胃は身体のエネルギーをつくる製造工場のようなものです。
その工場では、お鍋をぐつぐつコトコト煮てエネルギーをつくり出しています。
そしてそのエネルギーを使って私たちの身体をつくったり、活動したりしています。

ところが冷たい飲み物をとったりして、そのお鍋を冷やしてしまうとどうでしょう。
ぐつぐつと煮ることができなくなって、大切なエネルギーをつくり出せなくなってしまいます。
すると身体がだるくなってきたり、食欲がなくなってきたりと全体の調子がダウンしてきます。

ですので水分を摂るときには、常温のものか温かいものを飲んで胃を冷やさないようにしましょう。
毎年夏バテしている方は、これに気をつけるだけでもずいぶんと身体の調子が変わってきますよ。

関連記事
夏の冷え
冷たい飲み物にご注意を
暑くなる前に汗をかく
汗をかいて夏を迎える
初夏の咳に

見えない川の流れを整える

ツボというのは何となくご存知の方が多いと思いますが、「経絡(けいらく)」という名前はお聞きになったことがあるでしょうか?
あまり馴染みのない方が多いかもしれませんね。
この経絡とツボは切っても切り離せないとても関係の深いものなのです。

ツボは正式名称「経穴(けいけつ)」といいます。
よく「肩こりにいいツボを教えてください」とか「便秘にいいツボを教えてください」などと聞かれることが多いのですが、ツボは皆さんが思っていらっしゃる通り身体のいろいろな部分に点在しています。
ただ肩こりに効くツボが肩にあるのは分かる気がしますが、なぜか手にも肩こりに効くツボがあったりします。
どうして身体の離れた部位に効くツボがあるのでしょうか?
不思議ですね。

実はツボというのは星座のように点々と身体にあるわけではないのです。
身体には見えない川のような流れが存在していると考えられていて、その川の流れのところどころに特別なスポットとしてあるものがツボなのです。
川の流れが線路だとしたらツボは駅のようなものです。
そしてその川の流れ、線路にあたるものが「経絡」なのです。
何だかよく分からないように思えた経絡も実はそんなに難しいものではないのです。

この経絡は大きな流れが何本かあって、川と同じように支流があったり合流していたりします。
また血管と同じように全身にはりめぐらされていて、目鼻口といった器官や臓器などあらゆるところに流れています。
見えない血管のようなものと考えると分かりやすいですね。

ツボというのはこの経絡の上にある特別なスポットですから、ツボに働きかけることでそのツボがある川の流れやその川が栄養しているものを整えることができます。
さきほど例にあげた肩こりに効くツボが手にあるのは、手から肩に向かって流れる経絡があるからなのですね。

シンプルにいうと鍼やお灸などはこのツボに働きかけ、経絡の流れを整えているのです。
身体に不調がある場合は、経絡である見えない川が汚れていたり流れが滞ったりしています。
そうしたときにツボを使って川を綺麗にし流れをスムーズにすることで、少しずつ身体が整い現れている症状が和らいでいきます。

関連記事
経絡とツボの関係
身体を全体でとらえる
流れながらバランスをとる
身体の上の症状・下の冷え
身体の症状はすべてつながっている

不調が固まる前に

そんなに辛いというほどでもないんですけど…と治療室にお越しになる方がいらっしゃいます。
そういう方もちろん大歓迎です。

病院の検査では何ともない、でも何となく調子が悪い、疲れているといった段階で手を打つことはとても大事です。
東洋医学では病と健康をはっきりと分けて考えません。
ここまでが健康でここからが病気だという風には考えないのですね。
グレースケールのように白から黒に向かってなだらかに濃淡が変化しているグレーの色が続いているように身体を診ています。
そしてどの色の段階でもそれぞれの状態にあった治療を行うことができます。
健康と病気を分けて考えないため、白でも黒でもグレーでも治療を行うことができるのですね。

何となく現れた不調の段階、病気と名前のつく前の段階では、身体はまだすぐに治りやすい状態です。
ですが不調が固まっていくにつれてグレーの色が濃くなり、いざ鍼灸や漢方など東洋医学の治療を受けても、治りにくくよくなるまでに日数がかかるようになってしまいます。

ですからちょっとした不調でも特に病気がない段階でも、遠慮することなく鍼灸治療を受けにお越し頂けたらと思います。

関連記事
鍼灸で神経の緊張をゆるめる
病は積み上げてきたもの
眠りはほてった身体を静める
風邪は休みどきのサイン
小さな疲れや不調を大切に

身体は季節に呼応する

まだまだ寒い日もありますが、日差しがだいぶ春らしくなってきましたね。

明日3/6(火)は啓蟄です。
虫もごそごそと地中から這い出て動き始める頃という意味ですが、植物や虫、動物たちは季節を敏感に感じ取り、それに合わせて身体を変化させたり行動を起こしたりします。
人間も例外ではありません。
自分では気づいていないだけで、身体の見えない部分では虫がごそごそと這い出るような動きがダイナミックに起こっているのです。
夏には夏の秋には秋の冬には冬の、そして春が近づく今の季節には春の力が身体の中で動き始めているのですね。

春の力とは一体どのようなものでしょうか。
自然を観察してみるとよく分かります。
虫が穴から這い出たり動き始めたりするような力、植物が芽吹くといったような力です。
発散、発生、発陳といった言葉でも表されます。
冬の間にしっかり守り熟成させた力を春になって発揮し始めるような、内から外へ向かう力です。

陽気に誘われて何だか身体を動かしたくなってきた、新しいことを始めたくなってきたなんて方もいらっしゃるのではないでしょうか。
見えない部分で働いている力を自然と感じとっているのですね。
そういったことを感じる方も感じない方も、少し早く起きるようにしたり身体を軽く動かしたりして、日常の過ごし方を冬モードから春モードへと少しずつシフトチェンジしましょう。
そうすることで季節に身体が呼応しやすくなり、心身の不調も出にくくなりますよ。

関連記事
変化の春には身体のケアを
花粉症に鍼灸
身体の感覚に耳を澄ます
まもなく4月
身体の中の自然もめぐる